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68(2)高齢者施設等における福祉用具管理・運用のあり方(1)で整理した実証事業に伴う変化を踏まえて、高齢者施設等における福祉用具管理・運用のあり方として下記の事項が指摘できる。指摘されている内容は基本的には平成24年度事業での指摘内容と共通しているが、新たに取り組んだ施設特有の指摘もあり、それらについて補足して整理した。1)施設等における自立支援に向けた福祉用具活用のあり方高齢者施設においても、利用者の状態に適合し、自立支援をねらいとした福祉用具の利用(利用者の個別性への対応、短期的な変化、長期的な変化に対応した支援方法の変更など)を拡大することが検討されてよいのではないか。ただしこれを実施する際には、福祉用具の利用に伴う状態変化、生活行動変化への対応の体制を整えることが前提となる。状態変化、生活行動変化によって生じるリスクなどにきめ細かく対応した注意喚起、調整等の促しなどが行えることが重要であるが、今回の実証事業では、この点はある程度対応できていたと考えられる。利用者の状態変化への対応を進めると、新たな行動レベルに対応した介護目標の設定、それに応じた福祉用具への移行の判断、適用指導を行えることが重要となる。自立支援に対応した福祉用具利用を進める際には、ここまで視野に入れた対応体制の整備を検討しておく必要がある。施設側でも、勉強会、研修会を開催するなどして、関係する各職種が福祉用具やその利用方法についての知識・スキルを高めていくことも必要になると考えられる。職員の中で中核となるグループを作り、そこでノウハウ、スキルを高めるとともにそこから他の職員へ普及させるという取り組みも有効である。また、利用者の状態に応じて多種多様の福祉用具が混在するため使用方法の混乱や誤操作なども懸念されることから、個々の用具の特性を十分に理解した上で使用することや、選定の際に操作性にも配慮すること、そうした意識を普及させることも重要である。2)福祉用具の運用・管理のあり方自立支援をねらいとした福祉用具利用を進めるためには、1)で示したような利用者の変化に対応できる運用・管理の体制整備が重要となる。施設内の体制整備と合わせて、今回実施した福祉用具貸与事業者(=福祉用具専門相談員)の活用など、外部資源の効果的な活用が検討されてよいのではないか。こうした福祉用具管理運用の体制整備に際しては、施設内での体制に基づいた基本手順の整備だけでなく、非定型ケースへの対応なども想定して、導入・管理の手順を整備する必要がある。また、管理・運用のコスト感覚、すなわち施設としてのコストメリットを明確にするとともに、それを実現するための運用上のポイントが意識されることも重要である。