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11.調査の目的と全体構成(1)事業実施の目的地域包括ケア研究会で「(リハビリに取り組む前段階としての)自立支援促進」、「してあげる介護」からの脱却の重要性が指摘され、社会保障審議会でも「(不適切な用具利用による)廃用症候群(生活不活発病)促進の可能性」が指摘されるなど、自立支援促進に向けた取り組みが求められてきている。在宅介護については福祉用具専門相談員および介護支援専門員が継続的にモニタリングし、必要に応じて用具を入れ替えるなどの継続的対応の体制がつくられているが、高齢者施設における福祉用具利用については、必ずしも自立支援の観点からの明確な支援の体制が整っているとはいえない状況が指摘されてきた。今後、施設から在宅へのシフトが進む介護環境では、入所中の生活環境についてもこれまで以上に自立支援を意識した生活環境整備が重要となっている。こうした問題意識に基づき、平成24年度では、高齢者施設等における入所者の自立支援の視点から見た生活環境整備の状況、特に生活行動支援場面における自立度向上をねらいとした福祉用具利用の在り方を実証的に検討することをねらいとしてモデル事業を行った。その結果、居宅と同様に、専門職のアセスメントに基づき、福祉用具貸与サービスを活用して幅広い選択範囲から個々の入所者に最適な福祉用具を選定、適用することで、入所者の機能的自立度(FIM)および生活行動が向上することが確認された。このような経緯を踏まえ、本事業では、全国の高齢者施設等でも広く自立支援に向けた福祉用具利用に取り組むことができるよう、高齢者施設の特性に応じて、効果的な福祉用具利用の体制整備、運用の進め方に関する方法、手順などを整理することを目的とし、昨年度の成果を踏まえた福祉用具利用の導入、運用の手順書案を検討した。また、サービス提供の特性、専門職配置の体制、福祉用具の利用経験の異なる高齢者施設(介護老人保健施設および介護老人福祉施設)を対象に福祉用具導入の実証事業を行い、そこで得られた検証データを基に手順書案を見直し、施設種別、特性別の運用マニュアルを作成した。