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はじめに本調査は平成25年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)の補助を得て、一般社団法人日本福祉用具供給協会が実施したものです。現在、在宅介護については福祉用具専門相談員および介護支援専門員が継続的にモニタリングし、必要に応じて用具を入れ替えるなどの継続的対応の体制がつくられています。一方で、高齢者施設における福祉用具利用については、必ずしも自立支援の観点からの明確な支援の体制が整っているとはいえない状況が指摘されてきました。今後、施設から在宅へのシフトが進む介護環境では、入所中の生活環境についてもこれまで以上に自立支援を意識した生活環境整備が重要になっています。こうした問題意識に基づき、平成24年度では、高齢者施設等における入所者の自立支援の視点から見た生活環境整備の状況、特に生活行動支援場面における自立度向上をねらいとした福祉用具利用の在り方を実証的に検討するためのモデル事業を実施しました。居宅と同様に専門職のアセスメントに基づいて福祉用具貸与サービスを活用して、幅広い選択範囲から個々の入所者に最適な福祉用具を選定し、適用を調整しました。その結果、入所者の機能的自立度(FIM)および生活行動が向上することが確認されました。本年度は、昨年度の成果を踏まえて福祉用具利用の導入、運用の手順書案を検討し、それを用いてサービス提供の特性、専門職配置の体制、福祉用具の利用経験の異なる高齢者施設(介護老人保健施設および介護老人福祉施設)を対象に福祉用具導入の実証事業を行いました。さらに、実証事業で得られた検証データを基に、全国の高齢者施設等でも広く自立支援に向けた福祉用具利用に取り組むことができるよう、高齢者施設の特性に応じて、効果的な福祉用具利用の体制整備、運用の進め方に関する方法、手順などを整理して、施設種別、特性別の運用マニュアルを作成しました。全国の高齢者施設でこのマニュアルが活用され、適切な福祉用具の利用と入所者の自立支援が促進されることを期待するものです。平成26年3月一般社団法人日本福祉用具供給協会