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はじめに介護保険制度施行から12年を経て、介護保険サービスの受給者数は拡大の一途をたどっています。近年は、地域包括ケア研究会で「(リハビリに取り組む前段階としての)自立支援促進」、「してあげる介護」からの脱却の重要性が指摘され、社会保障審議会でも「(不適切な用具利用による)廃用症候群(生活不活発病)促進の可能性」が指摘されるなど、自立支援促進に向けた取り組みが求められてきています。自立支援の有効なツールである福祉用具の利用状況をみると、在宅介護については福祉用具専門相談員および介護支援専門員が継続的にモニタリングを行い、必要に応じて用具を入れ替えるなどの継続的対応の体制がつくられています。これに対して高齢者施設における福祉用具利用については、必ずしも自立支援の観点からの明確な支援の体制が整っているとはいえない状況が指摘されています。今後、施設から在宅へのシフトが進む介護環境においては、入所中の生活環境についてもこれまで以上に自立支援を意識した生活環境の整備が重要となります。こうした問題意識に基づき、社団法人日本福祉用具供給協会では、平成23年度老人保健事業推進費等補助金(老人保健健康増進等事業分)の補助金により「高齢者施設等における福祉用具利用と効果的な運用体制に関する調査」を行いました。この調査では、高齢者施設等における個々の入所者の自立支援の視点から見た生活環境整備の状況、特に生活行動支援場面における福祉用具の選定と利用指導の状況を把握しました。さらに、施設全体での福祉用具運用・管理の状況と利用効果の評価の体制についても把握し、自立支援に向けた環境整備の視点から、効果的な福祉用具の利用とその運用・管理のあり方を提案しています。この冊子は、福祉用具貸与事業者をはじめ、高齢者介護施設、リハビリテーション専門職等、福祉用具に関わる多くの関係者の皆様に、上記調査の成果の概要をご紹介するものです。今後は施設と居宅や高齢者住宅などとの行き来がこれまで以上に増加すると予想されますが、そうした状況でも、施設に入所した際に適切な福祉用具の利用環境が得られるように、本報告書を基に今後の対応について活発な議論が行われることを期待するものです。平成24年3月社団法人日本福祉用具供給協会